体外循環症例データベースとは

病院をはじめとする医療施設において実施されている体外循環では、人工心肺装置とこれに関連する医療機器が使われています。体外循環が行われている間のこれら装置からの生体情報や使用した医療材料などは症例毎に経時的に記録されています。この記録は、これまで診療録(カルテ)の一部として保管されて います。 一方、人工心肺装置や医療材料、医薬品などは日進月歩の勢いで改良が加えられ、体外循環の技術・操作も変化してきています。このような変化は、学会での発表、 論文や生涯教育などを通じて伝えられてきています。これは、操作をする技術者個人が育んだ技術を多くの同じ仕事をする仲間たちに公開し、より良い治療を提供したいとの強い思いが込められています。 こうした技術が果たしてきた功績は大規模データに裏付けられた評価に至っていないのが現状です。

私どもは、こうした技術がどのように発展していくのか、それを彼らが日常の業務として行った体外循環の記録から得られないかと考えました。そして、たどり着いたところは「臨床疫学」と言う学問でした。 臨床疫学では、患者様に行った診療に対してある一定の項目を用いて客観的に評価しようとするものです。体外循環においては、これを実施するためには、体外循環記録のある一定の項目のデータを全国レベルで収集します。このデータを電子情報として収集し、保管するためのしくみが「体外循環症例 データベース」です。

この「体外循環症例 データベース」により収集されるデータは、「臨床研究の倫理指針」に則って実施されます。そして、蓄積されたデータを用いた疫学的評価により体外循環技術を磨き、患者様へより良い医療を提供する取り組みの一つです。

データの正確性の確保
体外循環症例データベースに登録されるデータは全て患者様が手術を受けられた医療施設で入力されています。これらのデータに誤りが無いかは各医療施設のデータマネージャーによって管理・チェックされています。さらに、データ解析に携わる研究者が各施設を訪問し、データの検証をしていきます。これらの取り組みを継続的に実施し、信頼性のあるデーターベースを維持して参ります。